6月4日、人気ロックバンドのMr.Childrenが2年7か月ぶりに発売したニューアルバム『REFRECTION』が話題になっている。
限定生産盤のBOX(税抜き9000円)を購入すると、通常のCDや特典DVDに加え、“USBアルバム”がついてくるからだ。
これを視聴するには、USBメモリに収録されている音楽データをパソコンに取り込むリッピング作業が必要となる。
なぜ、ミスチルはレコード業界でも珍しいUSB形式を採用したのか。
制作者サイドのコメントを総合すると、1枚のCDに収録できる時間(約79分)を超える約110分(全23曲)の
「大作」が完成したために、収まりきらなかった曲も含めてUSBにまとめたという。
そして、USBではCDよりも音質が良いといわれる「ハイレゾ音源」でのデータ取り込みを可能にしたため、
よりアーティストの生々しい演奏や臨場感などを伝えたいという“こだわり”もあったようだ。
実はハイレゾ音源や対応プレーヤーが注目されるようになったのは、ビートルズが2009年に発売した
リマスターアルバム、やはり限定生産のUSB盤がきっかけだった。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏がいう。
「ビートルズのUSBアルバムは周波数こそCDと同じでしたが、小さな音から大きな音まで収録できる幅が広がり、
そのダイナミックレンジを実感できるものでした。
その後、日本でも浜崎あゆみや宇多田ヒカルが限定でUSB盤を出して好評でした。
新しい音楽ビジネスとして考えた場合、CDをプレスして生産すると売れ残りリスクが発生するのに対し、
マスターの音楽データをコピーすればいいだけのUSBは経費もかからないうえに、高音質の曲を提供できるメリットがあります」
ここで気になるのが、今後USBアルバムが従来のCDに取って代わる流通手段になってしまうのかという点。
音楽配信サービスの市場拡大などにより、ただでさえCD販売は各家庭にパソコンが普及した2000年ごろから
低迷を続けている。伝えられている数字では、1998年に3000億円を超えていたCDの国内市場は、いまでは2000億円規模にまで落ちている。
だが、前出の安蔵氏は「市場は縮小しながらもCDは生き残る」と予測する。
「10代~20代の今のデジタルネイティブな若者たちにとって、音楽はデータさえ手に入ればよく、
CDやUSB、SDカードといったメディア自体を有難がる人は少ないでしょう。
でも、30代以上のCD世代や特定アーティストの長年のファン心理としては、配信された楽曲では
モノが残らないため、パッケージされたメディアを持っておきたいという所有欲が根強くあります」
音楽評論家の富澤一誠氏も同様の意見だ。
「1億2700万人いる日本の人口のうち、10代、20代は2800万人足らずで、50代より上の世代が6000万人以上と
圧倒的に多い。この世代は1960年代~80年代に青春時代を送った人たちで、目に見えない音楽を1曲200円程度で
200曲ダウンロードして携帯プレーヤーに入れるよりも、CDを10枚買うほうが価値が高いと感じています。
だからこそ、往年の歌謡曲を寄せ集めたコンピレーションアルバムが売れているわけですし、
アナログレコードが見直されたりしているのです。そう考えると、CDも完全に廃れてしまうことはないでしょう」
ただし、CDが今後も売れ続けるためには「絶対的な条件がある」と、富澤氏は指摘する。
「いま、ミリオンセラーを記録するアイドルやビジュアル系のCDは、ジャケットのデザインがすべて違うとか、
ライブの優先応募券が入っているなど、“グッズ化”して成功しているだけです。
もちろんレコードビジネスとしては評価しますが、ソースとなる楽曲自体が売れているわけではないのです。
やはり、CDを買ってまで繰り返し聴きたくなるような優れた楽曲や魅力的なアーティストが育ってこなければ、
ますます大量消費される配信サービスの勢いに流されてしまうでしょう」
さて、ミスチルのUSBアルバムがレコード業界や他のアーティストにどんなインパクトを与えるのか。
多様なメディアや視聴方法が乱立する現状だけに注目したい。
http://www.news-postseven.com/archives/20150605_327301.html
限定生産盤のBOX(税抜き9000円)を購入すると、通常のCDや特典DVDに加え、“USBアルバム”がついてくるからだ。
これを視聴するには、USBメモリに収録されている音楽データをパソコンに取り込むリッピング作業が必要となる。
なぜ、ミスチルはレコード業界でも珍しいUSB形式を採用したのか。
制作者サイドのコメントを総合すると、1枚のCDに収録できる時間(約79分)を超える約110分(全23曲)の
「大作」が完成したために、収まりきらなかった曲も含めてUSBにまとめたという。
そして、USBではCDよりも音質が良いといわれる「ハイレゾ音源」でのデータ取り込みを可能にしたため、
よりアーティストの生々しい演奏や臨場感などを伝えたいという“こだわり”もあったようだ。
実はハイレゾ音源や対応プレーヤーが注目されるようになったのは、ビートルズが2009年に発売した
リマスターアルバム、やはり限定生産のUSB盤がきっかけだった。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏がいう。
「ビートルズのUSBアルバムは周波数こそCDと同じでしたが、小さな音から大きな音まで収録できる幅が広がり、
そのダイナミックレンジを実感できるものでした。
その後、日本でも浜崎あゆみや宇多田ヒカルが限定でUSB盤を出して好評でした。
新しい音楽ビジネスとして考えた場合、CDをプレスして生産すると売れ残りリスクが発生するのに対し、
マスターの音楽データをコピーすればいいだけのUSBは経費もかからないうえに、高音質の曲を提供できるメリットがあります」
ここで気になるのが、今後USBアルバムが従来のCDに取って代わる流通手段になってしまうのかという点。
音楽配信サービスの市場拡大などにより、ただでさえCD販売は各家庭にパソコンが普及した2000年ごろから
低迷を続けている。伝えられている数字では、1998年に3000億円を超えていたCDの国内市場は、いまでは2000億円規模にまで落ちている。
だが、前出の安蔵氏は「市場は縮小しながらもCDは生き残る」と予測する。
「10代~20代の今のデジタルネイティブな若者たちにとって、音楽はデータさえ手に入ればよく、
CDやUSB、SDカードといったメディア自体を有難がる人は少ないでしょう。
でも、30代以上のCD世代や特定アーティストの長年のファン心理としては、配信された楽曲では
モノが残らないため、パッケージされたメディアを持っておきたいという所有欲が根強くあります」
音楽評論家の富澤一誠氏も同様の意見だ。
「1億2700万人いる日本の人口のうち、10代、20代は2800万人足らずで、50代より上の世代が6000万人以上と
圧倒的に多い。この世代は1960年代~80年代に青春時代を送った人たちで、目に見えない音楽を1曲200円程度で
200曲ダウンロードして携帯プレーヤーに入れるよりも、CDを10枚買うほうが価値が高いと感じています。
だからこそ、往年の歌謡曲を寄せ集めたコンピレーションアルバムが売れているわけですし、
アナログレコードが見直されたりしているのです。そう考えると、CDも完全に廃れてしまうことはないでしょう」
ただし、CDが今後も売れ続けるためには「絶対的な条件がある」と、富澤氏は指摘する。
「いま、ミリオンセラーを記録するアイドルやビジュアル系のCDは、ジャケットのデザインがすべて違うとか、
ライブの優先応募券が入っているなど、“グッズ化”して成功しているだけです。
もちろんレコードビジネスとしては評価しますが、ソースとなる楽曲自体が売れているわけではないのです。
やはり、CDを買ってまで繰り返し聴きたくなるような優れた楽曲や魅力的なアーティストが育ってこなければ、
ますます大量消費される配信サービスの勢いに流されてしまうでしょう」
さて、ミスチルのUSBアルバムがレコード業界や他のアーティストにどんなインパクトを与えるのか。
多様なメディアや視聴方法が乱立する現状だけに注目したい。
http://www.news-postseven.com/archives/20150605_327301.html
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